式根島で恋をした——恋人と行く、感情が揺れる離島旅

カップル旅行

「島時間」は、二人の時間

都会の喧騒から少しだけ離れてみたい——そんな気持ちから、私たちは小さな離島へ旅立つことにした。行き先は、伊豆諸島のひとつ「式根島」。東京から高速船で約3時間。いつもなら忙しくて気づけない二人の間の“時間”が、島に行くと不思議とゆっくり流れ出す。

旅の目的は観光名所を巡ることではなく、「一緒にいること」そのものだった。

島には信号がない。コンビニもない。だけど、それがいい。スマホの通知を切り、時計を見ることをやめたとき、本当の意味で“相手を感じる旅”が始まる。


船旅から始まる、非日常

竹芝桟橋から出発した船のデッキに出て、私たちは潮風を浴びた。都会のビル群が少しずつ小さくなっていく。行き先は見えない。でも、何となく大丈夫な気がした。

離島への船旅は、飛行機とは違う“旅の序章”を味わわせてくれる。非日常に切り替わるリズムが、船のエンジン音と波の音に重なって、二人の気持ちも自然にほぐれていく。

手を繋ぐわけでもないのに、波の揺れに合わせて肩が触れ合う。そんな瞬間さえ、特別に思えた。

東京・竹芝客船ターミナル↔︎式根島
高速ジェット船 約2時間20分
大型客船:最短9時間
ネット乗船券予約はこちら


式根島の白い砂浜で、無言の時間

島に着いたのは午前10時。式根島の白い砂浜「泊海水浴場(とまりかいすいよくじょう)」は、まるでプライベートビーチのようだった。

誰もいない海辺で、私たちはただ波の音を聞いていた。
都会では“沈黙”が不安だった。でもこの島では、言葉がないことが心地よかった。互いの存在が、言葉より確かなものに感じられる時間。

「こんなに何もせずに一緒にいたの、初めてかもね」

彼がふと呟いた。私も同じことを思っていた。


地元の食堂で知る、知らない一面

お腹が空いた私たちは、港近くの小さな食堂に入った。店内には観光パンフレットもなければ、Wi-Fiもない。ただ、地元の漁師さんたちが食事をしているだけ。

注文した刺身定食が運ばれると、驚くほど新鮮な魚が並んでいた。彼は「こんな美味い魚、人生で食べたことない」と本気で驚いていた。
普段は寡黙な彼が、地元の店主と自然に話し出す。その姿に、私は少しだけ“知らない彼”を見た気がした。

旅は、人の素の部分を引き出す。そう思った。


満天の星に、二人で泣いた夜

夜は、島の露天風呂へ行くことにした。海辺にある天然の温泉。湯船に浸かりながら、満天の星空を見上げた。

空には、都会では見えない星たちが瞬いていた。言葉が出なかった。

「こんなに綺麗なんだね」

その一言の後、私たちは二人して涙をこぼしていた。特別な理由なんてなかった。きっと、今までの忙しさや疲れ、会えない日々の寂しさ、何もかもが星空の下で溶けたのだと思う。

島で過ごした時間が、私たちの心を解きほぐしていた。


島の朝——「帰りたくない」その理由

翌朝、私は小さな民宿の縁側でコーヒーを飲んでいた。彼はまだ眠っている。
波音しか聞こえない島の朝は、何より贅沢な時間だった。

私はふと、「帰りたくないな」と思った。それは島が心地よいからだけではない。
この島での彼との時間が、あまりにも特別だったからだ。

旅の終わりは、始まりより少し切ない。だけど、私たちの間には確かに何かが生まれていた。


恋人と行く離島旅のすすめ

恋人と離島に行くことは、単なる観光旅行ではない。
一緒に何もしない時間を過ごし、互いの“素”と向き合うための時間。島は、そんな二人の間に静かに寄り添ってくれる場所だ。

離島には、観光地にありがちな“映えスポット”も、“有名なデートスポット”もないかもしれない。でも、それがいい。
二人だけの時間と景色を、静かに大切にできる。

もしあなたが恋人と本当に心を通わせたいなら、ぜひ一度、小さな島へ行ってみてほしい。


島で恋をした——本当の意味

この旅で、私はあらためて「島で恋をした」と思った。

それは、彼に恋をしたことだけではない。

  • 海に恋をした。
  • 島の人の優しさに恋をした。
  • 静けさに恋をした。
  • 二人で過ごす“何もない時間”に恋をした。

そして、島がくれた時間が、また恋人である彼に向き合うきっかけになった。
島に恋をすることは、今いる“相手”をもう一度好きになることだったのかもしれない。


これからの二人の旅へ

船が島を離れるとき、私は彼の手を強く握っていた。
「また来ようね」
そう言うと、彼はいつものように無口なまま頷いた。

私たちの物語は、あの小さな離島で静かに始まっていた。
これからもきっと、二人でたくさんの場所へ旅するだろう。でも、式根島の時間だけは、特別なものとして心に残り続ける——そんな気がした。

島で恋をした。
それは、何にも代えられない“感情が揺れる旅”だった。

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