こんにちは、ShimaSuki編集部です。
沖縄本島中部、読谷村字座喜味。
リゾートホテルやビーチのイメージが強いこのエリアに、沖縄の歴史を静かに物語る世界遺産「座喜味城跡(ざきみじょうあと)」があります。
派手な演出はなく、観光地としての賑わいも控えめ。
それでも、城跡に一歩足を踏み入れた瞬間、多くの人が「ここは特別な場所だ」と感じます。
今回は、座喜味城跡そのものの魅力と、周辺環境も含めた旅の楽しみ方を、実際に訪れる目線でご紹介していきたいと思います。
座喜味城跡とは――読谷村に残る世界遺産のグスク

座喜味城跡は、15世紀前半に築かれたとされる琉球のグスク(城)です。
築城を手がけたのは、名将として知られる護佐丸(ごさまる)。
彼は、首里王府に仕えた忠臣として、琉球史に名を残しています。
座喜味城跡は、2000年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の構成資産として、世界文化遺産に登録されました。
政治や軍事、そして地域支配の拠点としての役割を担っていた城であり、当時の琉球王国の統治体制を知る上で重要な存在です。
標高約120メートルの小高い丘に築かれており、読谷村一帯を見渡す立地も特徴的です。
護佐丸という人物が残したもの
座喜味城を築いた護佐丸は、
琉球史の中でも特に評価の分かれる人物の一人です。
忠臣として王府に仕えた一方で、
後年は阿麻和利との関係や、政治的対立の中で悲劇的な最期を迎えました。
しかし、座喜味城跡を訪れると、
彼が「戦うためだけの城」を築いた人物ではなかったことが伝わってきます。
石垣の美しさや城の配置には、
防御だけでなく、人が暮らし、統治する場としての配慮が感じられます。
それは、護佐丸が単なる武将ではなく、
地域を治める立場にあった人物だったことを物語っています。
座喜味城跡は、護佐丸の功績を直接語る場所ではありませんが、
城の構造や残された遺構を通して、
彼の考え方や価値観を静かに伝え続けています。
初めてでも歩きやすい、整った城跡

座喜味城跡を訪れてまず感じるのは、城跡全体がとても整備されているという点です。
石段や通路は比較的なだらかで、初めてグスクを訪れる方でも歩きやすい構造になっています。
城は主に一の郭、二の郭から構成されており、
コンパクトながらも、琉球石灰岩を用いた堅牢な造りが印象的です。
中でも目を引くのが、美しい曲線を描く石垣です。
座喜味城の石垣は、沖縄のグスクの中でも特に完成度が高いと評価されています。
直線ではなく、緩やかなカーブを描くことで、外部からの攻撃を防ぐ工夫が施されており、
当時の高度な築城技術を間近で感じることができます。
アーチ門が残る、貴重な城

座喜味城跡の大きな特徴のひとつが、アーチ型の城門です。
沖縄に現存するグスクの中でも、石造アーチ門が残っている例は多くありません。
門をくぐる瞬間、自然と背筋が伸びるような感覚があります。
これは、単なる遺構ではなく、かつて人々が行き交い、城として機能していた「入口」だからこそ感じられるものかもしれません。
石の一つひとつがしっかりと組み合わされ、
長い年月を経てもなお、その形を保ち続けている姿には、静かな説得力があります。
城の上から眺める読谷の風景

城跡の上部に立つと、読谷村の集落や畑、遠くの海まで見渡すことができます。
高層ビルはなく、視界を遮るものも少ないため、風景はとても穏やかです。

天気の良い日には、空の広さと風の心地よさを強く感じられます。
観光地というよりも、「土地の上に立っている」という感覚に近いかもしれません。
この眺めこそが、座喜味城がこの場所に築かれた理由を、言葉よりも雄弁に物語っています。
座喜味城跡に漂う静けさ

世界遺産と聞くと、多くの観光客で賑わうイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、座喜味城跡は比較的落ち着いた雰囲気が保たれています。
団体観光客が少なく、自分のペースで歩ける点も、この城跡の魅力です。
石垣に触れ、風の音に耳を澄ませながら、ゆっくりと過ごす時間は、
忙しい日常から少し距離を置くのにぴったりです。
歴史を知ると、旅はより深くなる
座喜味城を築いた護佐丸は、後に中城城へ移り、その生涯を終えます。
彼の人生は、琉球王国の権力争いや政治的緊張と深く結びついていました。
座喜味城跡を歩きながら、
「この城は、どのような思いで築かれたのか」
「ここから、何を守ろうとしていたのか」
そんなことを考えると、旅は単なる観光ではなく、歴史との対話に変わっていき、いつもと違った沖縄を感じ取ることができます。
座喜味城跡を訪れる前に知っておきたいこと
座喜味城跡は屋外の史跡のため、
訪れる際は歩きやすい靴がおすすめです。
石段や坂道は整備されていますが、
滑りにくい靴のほうが安心して散策できます。
また、日差しを遮る場所が少ないため、
帽子や飲み物を用意しておくと快適です。
特に夏場は、短時間でも体力を消耗しやすくなります。
こうした準備をしておくだけで、
座喜味城跡で過ごす時間は、
より穏やかで心地よいものになります。
周辺とあわせて楽しみたい、読谷村の魅力
座喜味城跡のある読谷村は、沖縄本島の中でも文化色の強いエリアです。
やちむん(沖縄の焼き物)の工房や、昔ながらの集落、自然の残る海岸線など、
観光と暮らしが穏やかに共存しています。
城跡を訪れた後は、村内を少し散策してみるのもおすすめです。
派手さはありませんが、読谷村ならではの落ち着いた沖縄の姿に出会えます。
座喜味城が築かれた「読谷」という土地の意味
座喜味城跡を理解するうえで欠かせないのが、城が築かれた「読谷」という土地そのものです。
読谷村は、沖縄本島中部に位置し、古くから農業と漁業が盛んな地域として知られてきました。
首里からほどよい距離にあり、海と陸の両方を見渡せる地形は、
王府にとっても重要な防衛・統治エリアでした。
座喜味城は、単独で存在していた城ではなく、
首里を中心としたグスクネットワークの一部として機能していたと考えられています。
そのため、城跡に立つと感じる「落ち着き」は、
単なる観光地の静けさではなく、
長い年月を通じて人々の生活と共にあった場所ならではのものです。
城の石垣の向こうに見える畑や集落は、
かつてから続く読谷の暮らしの延長線上にあります。
この「生活と歴史の距離の近さ」こそが、
座喜味城跡が今も身近に感じられる理由なのかもしれません。
座喜味城跡は、沖縄を「静かに味わう」場所

もし、「沖縄は何度も行っている」と感じている方であれば、
座喜味城跡は、これまでとは違う沖縄を教えてくれるはずです。
リゾートでもなく、ビーチでもない。
石と風と歴史が残る場所で、静かに時間を過ごす旅。
座喜味城跡は、沖縄を深く知りたい人にこそ訪れてほしい、
そんな世界遺産です。
座喜味城跡(ざきみじょうあと)
沖縄県中頭郡読谷村字座喜味708-6番地
【TEL】098-958-3141
無料で見学することができます。

