こんにちは、ShimaSuki編集部です。
沖縄本島北部、やんばると呼ばれる豊かな自然が色濃く残る国頭郡今帰仁村。
その小高い丘の上に、静かに、しかし圧倒的な存在感で佇んでいるのが「今帰仁城跡(なきじんじょうあと)」です。
青く広がる東シナ海、緑深いやんばるの森、そして曲線を描きながら連なる石垣。
ここは、単なる「遺跡」ではありません。
沖縄の歴史、美意識、祈り、そして自然との共生を、今もなお肌で感じられる特別な場所です。
世界遺産・今帰仁城跡の歴史的背景から、実際に訪れたときの見どころ、季節ごとの魅力までを、ご紹介していきます。
今帰仁城跡とは?――琉球王国成立以前の要衝

今帰仁城跡は、13世紀頃から15世紀初頭にかけて栄えた「北山王(ほくざんおう)」の居城跡です。
当時の沖縄本島は、北山・中山・南山の三つの勢力に分かれており、今帰仁城は北山王国の政治・軍事・文化の中心地でした。
城の立地は、標高約100メートルの石灰岩丘陵。
敵の侵入を防ぎやすく、また海上交通の監視にも適した、まさに戦略的要衝です。
しかし1416年、中山王・尚巴志(しょうはし)による北山討伐によって北山王国は滅亡。
その後、今帰仁城は政治の表舞台から姿を消しますが、城跡そのものは人々の祈りの場として大切に守られてきました。
2000年には「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の一つとして、ユネスコ世界文化遺産に登録されています。
迷路のような石垣が語る、琉球の城づくり

今帰仁城跡を訪れて、まず圧倒されるのが石垣の規模と美しさです。
城壁の総延長は約1,500メートル。沖縄のグスクの中でも、首里城跡に次ぐ規模を誇ります。
特徴的なのは、直線ではなく、自然の地形に沿って「なだらかな曲線」を描く石垣。
これは琉球の城づくりに共通する特徴で、防御性だけでなく、景観との調和も重視されていました。
使用されている石は、主に琉球石灰岩。
大小さまざまな石を巧みに組み合わせた「野面積み(のづらづみ)」は、機械のない時代に人の手だけで築かれたとは思えない完成度です。
石垣の間を歩いていると、
「この石は、どれだけの人の手を経て、ここに積まれたのだろう」
そんな想像が自然と湧いてきます。
城内から望む絶景――海と空が溶け合う瞬間

今帰仁城跡最大の魅力の一つが、城内各所から望める圧倒的な眺望です。
本丸跡付近からは、エメラルドブルーの海と、古宇利島(こうりじま)を望むことができます。
晴れた日には、空と海の境界が溶け合い、時間が止まったような感覚に包まれます。
特におすすめなのが、夕方の時間帯。
西日に照らされた石垣がやわらかなオレンジ色に染まり、日没とともに風景が刻々と変化していきます。
観光地でありながら、比較的静かな空気が流れているのも今帰仁城跡の魅力。
ベンチに腰掛け、ただ景色を眺めているだけで、心が整っていくのを感じられます。

「祈りの城」としての今帰仁城跡

今帰仁城跡は、戦いの場であると同時に、祈りの場でもありました。
城内には「御嶽(うたき)」と呼ばれる聖地が点在しています。
御嶽は、神が降り立つ場所とされ、現在でも地元の人々により大切にされています。
観光で訪れる際には、
・立ち入り禁止区域には入らない
・大声で騒がない
・石や植物を持ち帰らない
といった基本的なマナーを守ることが重要です。
ここは「見学する場所」であると同時に、「敬意を払う場所」でもあるのです。
春だけの特別な景色――今帰仁城跡の桜まつり
沖縄の桜は、本州とは異なり、1月下旬から2月上旬に見頃を迎えます。
今帰仁城跡は、沖縄有数の桜の名所としても知られています。
城跡を囲む寒緋桜(カンヒザクラ)が咲き誇る時期には、「今帰仁城跡桜まつり」が開催され、夜間ライトアップも行われます。
濃いピンク色の桜と、ライトに浮かび上がる石垣。
歴史遺産と自然が織りなす幻想的な風景は、この時期にしか見ることができません。
訪問前に知っておきたい基本情報
今帰仁城跡は、那覇空港から車で約1時間30分ほど。
公共交通機関でもアクセスは可能ですが、北部観光を含める場合はレンタカー利用が便利です。
敷地内は起伏があり、石段や未舗装の道も多いため、歩きやすい靴は必須。
夏場は日差しが強いため、帽子や飲み物の持参もおすすめします。
また、城跡の見学には、ゆっくり回って約1時間〜1時間半ほどを見ておくと安心です。
今帰仁城跡は「沖縄を深く知る」ための入口

ビーチリゾートのイメージが強い沖縄ですが、
今帰仁城跡を訪れることで、沖縄が持つもう一つの顔――歴史と精神文化――に触れることができます。
石垣の一つひとつ、風の音、海の色。
そのすべてが、過去と現在を静かにつないでいます。
ただ写真を撮るだけでは終わらない、
「心に残る旅」をしたい人にこそ、今帰仁城跡はおすすめしたい場所です。
沖縄本島北部を訪れるなら、ぜひ時間をとって足を運んでみてください。
きっと、あなた自身の中に残る風景が見つかるはずです。
今帰仁城跡と巡る、名護・古宇利島 1日モデルコース
――北部やんばるを味わい尽くす、王道ドライブ旅
今帰仁城跡は、名護市や古宇利島と組み合わせることで、沖縄本島北部の魅力を一日でバランスよく体感できます。
歴史、自然、海景色、そして地元グルメ。
移動距離も比較的短く、初めての北部観光にもおすすめのコースです。
9:30|名護市を出発
那覇市内から名護市までは、沖縄自動車道を利用して約1時間。
名護市は沖縄本島北部観光の拠点となる街で、スーパーや飲食店も多く、旅のスタート地点として最適です。
朝は名護市内で軽く朝食をとり、レンタカーで出発しましょう。
10:30|世界遺産・今帰仁城跡をじっくり散策

名護市から今帰仁城跡までは、車で約30分。
午前中の今帰仁城跡は、観光客が比較的少なく、石垣や景色を落ち着いて楽しめる時間帯です。
城門をくぐり、城壁に沿って歩きながら、本丸跡へ向かいます。
本丸跡から望む古宇利島方面の海は、この城が「海を見守る要塞」であったことを実感させてくれます。
写真撮影だけでなく、少し立ち止まって風景を味わう時間を取るのがおすすめです。
見学時間の目安は約1時間〜1時間30分ほど。
12:30|今帰仁村周辺でランチ
今帰仁城跡周辺や、名護方面へ戻る途中には、沖縄そば店や地元食材を使った食堂が点在しています。
派手さはありませんが、観光地化されすぎていない、素朴な味わいが魅力。
城跡散策で少し疲れた体に、温かい沖縄料理が染み渡ります。
14:00|古宇利大橋を渡って古宇利島へ

今帰仁村から古宇利島までは、車で約20分。
全長約2kmの古宇利大橋は、沖縄本島屈指の絶景ドライブスポット。
橋を渡る瞬間、視界いっぱいに広がるエメラルドグリーンの海は、思わず声が出るほどの美しさです。
橋の途中での停車は禁止されているため、渡り切った先の駐車場でゆっくり景色を楽しみましょう。
14:30|古宇利ビーチ&島内散策

古宇利島では、古宇利ビーチ周辺を中心に散策がおすすめです。
遠浅で透明度の高い海は、遊泳シーズンでなくても十分に楽しめます。
ビーチを歩くだけでも、日常から切り離されたような感覚を味わえるでしょう。
時間に余裕があれば、島内の小さなカフェで休憩するのもおすすめです。
16:30|名護市方面へ戻る
古宇利島を後にし、名護市方面へ戻ります。
夕方は交通量が増えることもあるため、時間には少し余裕を持って移動しましょう。
17:30|名護市でサンセット or 夕食
名護市内には、西海岸沿いを中心に、夕日が美しいスポットが点在しています。
そのまま名護市内で夕食をとるもよし、
体力に余裕があれば、ホテルに戻ってから再び外出するのも良いでしょう。
歴史から海へ――北部沖縄を一本の線で旅する
今帰仁城跡で琉球の歴史に触れ、
古宇利島で沖縄らしい海景色を堪能し、
名護市で旅を締めくくる。
この流れは、沖縄本島北部の魅力を一本の線でつないでくれる、完成度の高いモデルコースです。
「ビーチだけではない沖縄」を知りたい方に、ぜひ体験してほしい旅程です。

