
鹿児島県の最南端、沖縄本島の北約23kmに浮かぶ小さな島、与論島(よろんじま/ヨロン島)。
周囲約23km、サンゴ礁が隆起してできたこの島は、「癒やしの島」として知られています。文化的には薩摩(鹿児島)と琉球(沖縄)の両方の影響を受けており、独自のゆったりとした空気が流れています。
多くの観光客が訪れる夏とは異なり、冬の与論島は静寂に包まれます。聞こえてくるのは波の音と、風に揺れるサトウキビのざわめきだけ。「観光地を忙しく回る旅には疲れた」「ただ、ぼーっとしたい」。そんなあなたにこそ訪れてほしい、冬の与論島の過ご方をご紹介します。
この記事で分かること
- 幻の砂浜:冬でも見られる?「百合ヶ浜」と星の砂伝説
- 映画『めがね』のロケ地を巡り、黄昏れる時間を楽しむ
- 冬限定:サトウキビ収穫と出来たて黒糖作り体験
- 雨の日もOK!「赤崎鍾乳洞」と絶品島グルメ
- 「与論献奉(よろんけんぽう)」に触れる温かい交流
- 2泊3日:冬のヨロン満喫モデルコース
パスポートのいらない楽園で、何もしない贅沢を味わう旅へ出かけましょう。
※ご注意※
情報は記事執筆時点のものです。訪問前には必ず最新情報をご確認ください。
Chapter 1:奇跡の絶景「百合ヶ浜」と冬の海
与論島といえば、大金久海岸の沖合い約1.5kmに浮かぶ「百合ヶ浜(ゆりがはま)」。春から夏にかけての大潮の干潮時だけに姿を現すことから「幻の砂浜」と呼ばれますが、実は条件さえ合えば冬でも上陸できるチャンスがあります。

冬の海は透明度抜群!「ヨロンブルー」の真骨頂
冬は水温が下がりプランクトンが減少するため、海の透明度が一年で最も高くなります。ボートで百合ヶ浜へ向かう途中、船の上からでも海底の白砂の波紋や、泳ぐウミガメがはっきりと見えるほど。その透き通るような青さは「ヨロンブルー」と称され、見る人の心を浄化してくれます。
たとえ百合ヶ浜が完全に出現していなくても、くるぶし位の水深のサンドバーに降り立って、360度海に囲まれた不思議な浮遊感を味わうことができます。海の上に立っているような写真は、冬の柔らかい日差しの中でこそ美しく撮れます。
「星の砂」を自分の年の数だけ拾うと…?
百合ヶ浜の砂をよく見ると、星の形をした砂(有孔虫の殻)が混ざっています。「自分の年の数だけ星の砂を拾うと幸せになれる」という言い伝えがあります。静かな冬の海で、波音を聞きながら無心になって砂を探す時間は、意外なほど心が落ち着くマインドフルネスな体験です。
Chapter 2:映画『めがね』の世界へ。「黄昏れる」旅
2007年に公開され、今なお根強い人気を誇る映画『めがね』。そのロケ地となったのがここ与論島です。映画のテーマである「何もしない」「黄昏れる」を体験するには、観光客が少ない静かな冬がベストシーズンです。

トゥマイ(寺崎海岸)でピクニック
映画の中で「メルシー体操」が行われていた場所として有名なトゥマイ海岸。真っ白な砂浜と奇岩が織りなす景色は、ただそこに座っているだけで絵になります。お気に入りの本と温かいコーヒーを持って、波音をBGMに何時間でも過ごせる場所です。龍の形をした岩「ドラゴンロック」も見逃せません。
「ヨロン駅」で記念撮影
鉄道は走っていませんが、島には「ヨロン駅」というモニュメントがあります。その先には「天の川銀河鉄道本線」というロマンチックな線路のオブジェが海に向かって伸びています。夜になると満天の星空と繋がり、まるで銀河鉄道の旅に出かけるような幻想的な風景が広がります。
Chapter 3:冬限定の甘い香り!サトウキビと黒糖作り
冬の与論島をドライブしていると、背丈以上に伸びたサトウキビ畑(ウージ)が風に揺れる風景に出会います。そして、1月から3月はサトウキビの収穫(製糖)シーズン。島中に甘い香りが漂う、この時期だけの特別な風景です。
昔ながらの黒糖作り体験
この時期ならではのアクティビティとして強くおすすめしたいのが、サトウキビの収穫と黒糖作り体験です。鎌を使って自分で刈り取ったサトウキビを絞り、その汁を大鍋でグツグツと煮詰めていきます。
出来たての熱々の黒糖を食べたことはありますか?口の中でホロリと崩れ、濃厚な甘さとミネラルが体に染み渡る体験は感動ものです。市販の黒糖とは全く違う、フレッシュな味わいです。自分で作った黒糖は、世界に一つだけのお土産として持ち帰ることができます。
Chapter 4:雨の日もOK!大地を感じるスポットと島グルメ
冬は風が強い日や、曇りの日もありますが、天候に関係なく楽しめるスポットもあります。

神秘の地下世界「赤崎鍾乳洞」
大地が隆起してできた与論島の地下には、鍾乳洞が広がっています。「赤崎鍾乳洞」は、長い年月をかけて雨水がサンゴ石灰岩を浸食して作り出した自然の造形美。洞内には「幸福の門」や「剣の間」などと名付けられた見どころがたくさんあります。
冬でも洞窟内は気温が一定で過ごしやすく、雨の日でも濡れずに楽しめる貴重なスポットです。大自然のパワーを肌で感じてみてください。
心も体も温まる「島グルメ」
- 🍜 もずくそば
麺に島特産のもずくを練り込んだ、ツルッとした喉越しが特徴のお蕎麦。温かい出汁と一緒に食べれば、冷えた体もポカポカになります。「蒼い珊瑚礁」や「味咲」などの人気店で味わえます。 - 🍚 鶏飯(けいはん)
お隣の奄美大島と同様、与論島でも鶏飯は愛されています。ご飯に鶏肉、錦糸卵、パパイヤ漬けなどを乗せ、熱々の鶏スープをかけて食べるお茶漬け風の料理。サラサラと食べられ、優しい味わいです。 - 🌿 モリンガ麺
「奇跡の木」と呼ばれるスーパーフード、モリンガを練り込んだ鮮やかな緑色の麺。栄養価が高く、ヘルシー志向の方におすすめです。
Chapter 5:島人(シマンチュ)と触れ合う「与論献奉」
与論島には、古くから伝わる独特のおもてなし儀式「与論献奉(よろんけんぽう)」があります。これは、主人が客人に口上を述べて黒糖焼酎(有泉)を杯に注ぎ、飲み干した杯を返して回していくという儀式です。初めて会う人とも一瞬で心の距離が縮まる、魔法のような習慣です。
🍶 無理は禁物!楽しむためのマナー
「お酒が飲めないといけないの?」と心配になるかもしれませんが、現在は無理強いすることはありません。飲めない場合は口をつけるふりだけで断っても失礼にはなりません。大切なのは、相手を歓迎し、心を開いて交流しようとする気持ちです。冬の夜、地元の居酒屋で島の人と乾杯すれば、一生の思い出になるはずです。
Chapter 6:【2泊3日】冬の与論島・何もしない贅沢モデルコース
冬の与論島をゆったり楽しむための、おすすめモデルコースをご提案します。
Day 1:島時間へスイッチを切り替える
- 午後: 与論空港到着。レンタカーを借りてドライブ開始。
- 15:00: 「ヨロン駅」で海を眺めながら記念撮影。
- 16:00: 「ウドノスビーチ」で波音を聞きながらサンセット待ち。
- 18:00: 居酒屋で島料理と黒糖焼酎「有泉」で乾杯。
Day 2:絶景と体験で島を深く知る
- 午前: グラスボートに乗って「百合ヶ浜」へ。星の砂探し。
- ランチ: 温かい「もずくそば」でエネルギーチャージ。
- 14:00: 「黒糖作り体験」で出来たての甘さを堪能。
- 16:00: 「赤崎鍾乳洞」で神秘的な地下探検。
- 夜: 天気が良ければ、街明かりのない場所で満天の星空観賞。
Day 3:黄昏れと別れ
- 午前: 「トゥマイ海岸」で映画『めがね』気分でピクニック。最後のアート鑑賞(海)。
- お昼: お土産購入(モリンガ製品や黒糖など)。
- 午後: 空港へ。「尊尊我無(トートゥガナシ=ありがとう)」の心で島を後にする。
旅の準備とQ&A – 冬の与論島、ここが知りたい!
Q. 与論島への行き方は?
A. 飛行機とフェリーがあります。
飛行機: 那覇空港(約40分)、鹿児島空港(約1時間35分)から毎日運航。奄美大島経由も可能です。
フェリー: 那覇港から約5時間、鹿児島新港から約20時間。時間はかかりますが、船旅の風情を楽しみたい方にはおすすめです。
Q. 冬の気温と服装は?
A. 平均気温は15℃〜20℃。日中はポカポカと暖かい日もありますが、北風が強い日は体感温度が下がります。長袖シャツにパーカー、風を通さないウィンドブレーカーなどの羽織るものが必須です。
Q. おすすめのお土産は?
A. 定番は「黒糖」や黒糖焼酎「有泉」。最近ではスーパーフード「モリンガ」を使ったお茶や麺、与論島の海塩を使った製品も人気です。また、伝統織物「大島紬」の小物も旅の記念になります。
まとめ:何もしない贅沢を、冬のヨロンで。
冬の与論島には、派手な観光スポットや刺激的なイベントはないかもしれません。しかし、そこには透き通るような「ヨロンブルー」の海、風にそよぐサトウキビ畑、そして「おかえり」と迎えてくれる温かい島の人々がいます。
携帯電話を置いて、ただ波音に耳を傾ける。そんな「何もしない」贅沢な時間を過ごしに、冬の与論島へ出かけてみませんか?きっと、忘れかけていた大切な何かが見つかるはずです。

